1章 各章共通事項 2節 工事関係図書

建築工事監理指針 1章 各章共通事項


2節 工事関係図書

1.2.1 実施工程表

(1) 工程表は、工事の施工順序、所要時間等を示した表で、一般に次の2つの表示方法がある。

(ア) バーチャート:各施工ごとに横線で施工の開始・終了の月日を示し、順序と期間を表したもの

(イ) ネットワーク:工程の計画に当たって、全体工事のなかで、各作業がどのような相互関係にあるかを〇(イベント)と→(アロー)の組合せによって表したもの

(2) 「標仕」1.2.1(2)の「関連工事等」とは、同一工事場所において、施工上密接に関連する工事を意味しており、関連工事と当該工事と調整のうえ、対応することが必要である。

(3) 工事契約時に提出する工程表とは別に、工事の実施を工期全体にわたり作成された実施工程表は、工事の羅針盤のようなもので、これにより施工の順序及び工期全体が監視できる。したがって、条件変更等による場合(大きな設計変更があった場合等)は速やかに実施工程表を訂正させなければならない。
特に工期末には、関連工事等とも多くの作業が錯そうするため、施設の総合試運転や化学物質の濃度測定等に必要な期間を確保できるように各関連工事の受注者等間で調整出来るようなものでなければならない。

なお、工程表に示す主な事項及び工程表作成に当たって考慮すべき主な事項は、次のとおりである。

(ア) 気候、風土、慣習等の影響
(イ) 施工計画書、製作図及び施工図の作成並びに承諾の時期
(ウ) 主要材料等の現場搬入時期
(エ) 試験の時期及び期間
(オ) 検査及び施工の立会いを受ける時期(監督職員、検査職員、建築主事、消防署等)
(カ) 電気設備及び機械設備並びにその他の工事の工程(特に大型機器の搬入時期等)
(キ) 各仮設物の設置期間
(ク) 総合試運転調整の期間
(ケ) 上記の各事項に対する余裕

(4) 全体工程表のほか、補足的な目的で週間工程表、月間工程表、工種別工程表(コンクリート工事、塗装工事等個々の工種別)等を必要に応じて作成させる。
「標仕」1.2.1(5)の、補足の工程表は、監督職員の指示によって作成すると定められている。これは、その工事の受注者等が直接必要としない場合でも、監督職員として調整又は確認のために必要な場合(例えば、養生期間の確認等)や関連工事の受注者等に必要な場合(例えば、機械室、電気室の仕上げ施工が電気設備、機械設備の施工を制約する。)等を考慮しているからである。
また、完成間近になってくると、様々な仕上げ工事が入り乱れるため、そうした状況を的確に把握するためにも、週聞工程表(今週、来週を含む。)で補足するのがよい。

(5) 契約図内に「概成工期」(「標仕」1.1.2(ヌ)参照)として明示されている場合には、実施工程表に概成工期の明記が必要となる。概成工期とは、施設の総合試運転調竪 を行うのに支節のない状態にまで各工事を完了させる工期である。この時期におけ る各工事の進捗状況は、建築工事においては概ね各室とも仕上げを完了し、外構の 埋設配管及び給排水管の接続が完了している状態をいう。

1.2.2 施工計画書

(1) 施工計画書は、監理技術者又は主任技術者が当該工事で実際に施工することを具体的な文書にし、そのとおりに施工すると明示したものであり、記載内容は、仮設計画、安全・環境対策、工程計画、品質計画、養生計画等である。
なお、施工計画瞥には次の2種類がある。

(ア) 総合施工計画書
工事の着手に先立ち、総合仮設を含めた工事の全般的な進め方や、主要工事の施工方法、品質目標と管理方針、直要管理事項等の大要を定めた、総合的な計画書が受注者等によって作成される。

(イ) 工種別の施工計画書
ー工程の施工の着手前に、総合施工計画害に基づいて、工種別の施工計画を定めたものであり、施工要領書と呼ばれるものを含む。原則として、設計図書と相違があってはならない。

また、個別の工事について具体的に検討することなく、どの工事にも共通的に利用できるように便宜的に作成されたものでないことが必要である。

(2) 「標仕」1.2.2(2)の「関連工事等」とは、同一工事場所において、施工上密接に関連する工事を意味しており、関連工事と当該工事と調整のうえ、対応することが必要である。

(3) 品質計画は、受注者等が施工計画書で基本要求品質を満たすよう作成し、監督職員がこれを審査して承諾することにより、品質が定まり、これに基づき施工を実施しようとするものである。このため、監督職員の承諾のない品質計画により作業が行われることのないよう、監督職員は速やかに計画の内容を検討し承諾するようにしなければならない。

なお、施工上密接に関連する工事がある場合は、該当する工事関係者と調整を行う必要がある。

(4) 「標仕」1.2.2 (4)の規定は、施工計画書には受注者等の責任において定めるべき仮設計画等も含み記載したものが提出され、監督職員は、これを承諾するが、この際、承諾したのは「品質計画」に関する部分である。ただし、その他についても施工計画曹の概要は把握しておく必要がある。

1.2.3 施工図等

設計図書は、そのままでは施工や部品の製作には不十分な場合があるので、工事の実施に際しては施工図、現寸図等を作成する必要がある。これらは必要部分について作成されるが、設計図書と相違がないか確認するとともに、設計図のとおりに施工した場合に、工事完成後の建物等の維持管理、利用者の安全性・利便性等に関して問題が残らないように十分検討して施工図等を作成する必要がある。
また、関連工事等の納まりについては、該当する工事関係者と十分な検討を行う必要がある。

ただし、これらによって設計図書に指定されたものと変わる場合には、必要に応じて設計変更の手続(「標仕」1.1.8参照)を行う。

なお、「標仕」1.2.3 (2)の「関連工事等」とは、同一工事場所において、施工上密接に関連する工事を意味し、関連工事と当該工事と調整のうえ、対応することが必要である。

1.2.4 工事の記録等

(1) 記録の内容
(ア) 「標仕」1.2.4(1)は、平成31年版までは「工事の全般的な経過を記載した書面」と記載されていたが令和4年版からは「契約書に基づく履行報告に当たり、報告に用いる書式等は、特記による。」に修正された。これは「契約書」第11条(履行報告)の発注者への報告に対し内容や時期が異なるため、特記とすることで明確化された。また、記録には工事写真が含まれることから令和4年版から「記録等」に修正された。

(イ) 「標仕」1.2.4(2)の規定は、「標仕」1.1.8(1)を受けると同時に、契約書第18条(条件変更等)及び19条(設計図書の変更)をも受けている。
つまり、軽易な事項を除いて、設計図書と異なる材料、施工等については、全て記録しておかなければならない。

(ウ) 「標仕」1.2.4(3)(4)の場合及び特に問題となるおそれのある施工のときは、その部分を詳細に記録するために工事写真、見本品、試験成績書等によって補うようにする。

なお、工事写真に関する参考図書として、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「営繕工事写真撮影要領(平成28年版)による工事写真撮影ガイドプック 建築工事編及び解体工事編 平成30年版」がある。

(2) 記録に関する注意事項

(ア) 工事現場における記録は、機会を失うと記録を残せないものが多い。必要な記録を確実に残すには、実施工程を組み立てる際に記録の必要なものと、そうでないものを適切に区分し、計画的に記録しておくことが必要である。

また、設計図書に定められた品質証明や試験結果、施工記録はその都度整理しておく。特に、今までの事故例等を調べ、後に問題を残しそうな施工や材料については、集中的に記録を残すというような工夫も必要である。

(イ) 記録として残すかどうかは、「品質を証明するために必要であるか否か」を判断して決める。

また、これらの記録は、今後の情報公開に向けて必要な資料を適切に残しておくという観点が重要となる。

(ウ) 工事の記録は、受注者等が作成して監督職員に請求されたときは提出又は提示することになっている。監督職員は、記録を受け取る際に内容を十分検討し確認する必要がある。

なお、令和4年版「標仕」から1.2.4 (1)の契約書に基づく履行報告が「監督職員から請求されたときに提示又は提出する」記録等から外されたのは、「契約」第11条により監督職員の請求が無い場合でも提出が必要とされているためである。

(エ) 記録の残し方は、合理的なものとし、受注者等に無理な負担がかからないようにする。また、小規模工事等で内容が満足できるものであれば数種類の提出図書を一つにまとめてもよい。